在日本韓国YMCA連続講座Cut'n'Mix

MENU
切れてつながるためのウェブサイト
Cut'n'Mixとは?
Cut'n'Mix第3期「韓国併合」100年/「在日」100年を越えて
Cut'n'Mix第2期
Cut'n'Mix第1期
リンク・アクセス
お知らせ
  • 10/30(土)18:30-20:30、5月より延期となっていた米谷匡史(思想史)「大阪朝鮮詩人集団のサークル文化運動 ――詩誌『ヂンダレ』と「流民の記憶」」を開講します。
  • <2010/10/26>第3期の記録をアップしました。

6月5日(土)
「上野フィールドワーク――上野の山と街を歩く」



天海僧正の寛永寺創建以来、権力の象徴的中心であると同時に、出郷者のアジールでもあり続けた上野の山。
「下町」を代表する繁華街でありながら、多様な国籍や文化を持つ人々の営みが息づいてきた上野の街。
この魅力にあふれた山と街をめぐり、都市空間をめぐる重層的なせめぎ合いを体感します。


講師 五十嵐泰正(筑波大学専任講師/都市社会学)

1974年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程満期退学。東京・上野の商店街で社会学的な調査に取り組むかたわら、34年間暮らしてきた千葉県・柏でまちづくり団体にも関わる。


日時 6月5日(土)
14時にJR上野駅公園口に集合(2時間を予定)
※参加希望者は事前に下記の連絡先(電話・メール・ファックス)までお伝え下さい。
定員 15名(定員に達し次第締め切らせていただきます)
参加費 1000円(学生500円、高校生以下無料)


講座の記録


金耿昊(実行委員)


   6月5日、土曜の昼下がり。人のあふれる上野駅公園口から、フィールドワークが始まった。案内されるのは上野をフィールドに社会調査をしている五十嵐泰正さん。20名ほどの一行は、まずは上野の「山」を散策。文化会館・博物館・動物園、広大な敷地の中にさまざまな文化施設が居並ぶ上野公園は、もともと江戸時代、天海僧正が寛永寺を建立したことにさかのぼる。そしてそれ以来、江戸時代には上方のすぐれた文化を紹介する市民の文化娯楽スペースとして隆盛を極め、またそれが幕末に焼失した後にも明治政府が西洋近代文化を知らしめす博覧会を繰り返し開催するなど、この上野の「山」はその時々の権力が文化の隆盛を誇示する空間として形成されてきたのだそうだ。
 その一方、この広大な上野の「山」は失業者・出稼ぎ者・空襲などで焼き出された避難民などが居つく場所でもあった。今の東京文化会館のあたりには戦後直後には葵部落という貧民街があったというし、露店商を上野の山の掘り抜きに移転させた影響で人々の動線から外れ、エアー・ポケット化した西郷像周辺は次第に野宿者がたむろするような場所となる。そして90年代初めにはそこに在日イラン人のコミュニティが形成されていたそうだ。上野はながらく東京の北側の玄関口として機能してきたし、90年以降には京成スカイライナーが開通し、外国からの東京のエントランスの役割をもつことになる。かくして上野は貧しい人の集まるような地理的条件を持ち続けてきたが、そのようにして集まってくる「雑多なもの」を文化空間の中から見えなくさせようとするクリアランスの力学が上野の「山」には働いていて、そのようなせめぎあいがあることを、説明をききつつ学びました。
 次に上野公園から「パンダ橋」をとおって上野三丁目方面に移動。上野のまちづくりでは「山と街の回遊性」が課題となってきたという。「上野の山」に広がる文化空間と、アメ横などに駅まわりに広がる「街」の空間とがうまくつながっておらず、そもそも客層も違っているような側面もあるのだそうだ。それをふまえつつ、今度は上野の「街」を散策。 
 まずは少し場末感が漂う、東口近くの一画を歩く。いわれるまで気づかなかったが、そこにはゲイ・コミュニティがあるのだとか。戦後直後、上野公園で米兵相手の男娼が盛んに行われていたのがその起源で、下谷万年町という貧民街に隣接するこの区画に次第に移ってきたのだそうだ。次に、そこから道一本へだてたところにあるコリアンタウンへ移動。戦後の闇市には地付きのヤクザ・在日コリアン・中国人・復員軍人・出稼ぎに来た人など、さまざまな勢力の抗争があったが、1947年に地元の警察署長の立ち合いのもと、地元のヤクザと在日コリアンの代表者が杯を交わし、棲み分けの手打ちをやったのがこのコミュニティ形成のきっかけなのだとか。在日朝鮮人の民族産業であるパチンコのショールーム街があったり、かつての「国際親善マーケット」の趣を色濃く残す東上野キムチ横町があったりと、いまなお独特の雰囲気をもっていました。 
 そして次はアメ横へ。ここも戦後の闇市を起源とするようですが、アメ横センタービルの地下食品は何ともエスニックな香りを漂わせていました。そもそも米兵の横流し品をさばく形で始まったアメ横の商売は、その交渉・流通のノウハウを生かして海外輸入食品・雑貨を取り扱っていたが、スーパーマーケットなどの発達により舶来品が特に貴重でなくなってくる情勢のなかで、今度は日本人相手ではなく外国人相手の食品売り場に変わってきたという。アメ横の商売の特徴は、それぞれの時代のニーズにあわせて盛んに商売替えをしていくところにあるが、近年はそういう売れ線のものが見えづらくなり、また地代などの条件も含めて厳しい時代を迎えているのだそうです。
 その後、自由行動ののち、不忍池で再合流。江戸時代にはこのあたりが一種のリゾート地であったことなどを確認し、またそれに即して待合茶屋の再現などで町おこしをしようとしているとの説明をきき、最後に上野仲町通り界隈を歩く。それこそ江戸からの老舗のような店構えのものがある一方で、今をときめく「大人のお店」が立ち並ぶというなかなかカオスな雰囲気。しかし江戸時代の待合茶屋にも「大人のお楽しみ」の要素もあったというから、都市の機能としては共通する部分もあるとのこと。特徴的なのはその担い手に外国人が入り混じっていきているあたりではあろう。一人ではちょっと歩きづらかっただろうなと思いつつ、フィールドワークはこの後、上野広小路の交差点で最後のまとめをして解散となったのでした。
 ふりかえってみるとなかなか一つのイメージにはまとめづらいけれども、文化から生活にいたるさまざまな営みがモザイク状に混交している上野の地域性、とても魅力的でした。そしてまた、抑えるところはきっちり抑えつつ、随所に小ネタをふんだんにまぜてくる五十嵐さんのガイドもまた魅力的なものでした。また歩いてみようと思います。

1.
 就職先が(足立区に)決まって、上野に近い西日暮里(台東区谷中三丁目)に住居を定めました。赤坂・サントリー・ホールも池袋・芸術劇場もないい時代、クラシックの演奏会のみならず美術館にも通えるし、散歩にも出かけられるのが上野でした。
 近所に中尾彬・池波志乃(と、その実家・父親の金原亭馬生)の自宅がそれぞれありました。現在は不忍池湖畔のルネサンスとかいう超高層マンションにいらっしゃるようですが。
 先日のフィールド・ワークでは、上野広小路から仲町通りに入って湯島方面に出る手前にお二人が通ったという『多古久(たこきゅう)』というおでん屋を見つけました。
 東上野7丁目のお店、キムチ横丁とアメ横との関係、パチンコのショー・ルーム、アメ横センター・ビルの地階については初めて知った、興味あることがらでした。
 現在も文京区千駄木に住んでいて、ジョギングや散歩で上野公園にはよく出かけます。住んでいる街のことを知る機会は、いくらでもあるようで、実はその気にならないと実現しないもののようです。良い機会を与えていただきまして感謝いたしております。

2.
 上野は、子どもの頃の動物園から大人になってからの美術館など何度も訪問しているまちですが、こんなふうに詳しい解説を 伺いながらのフィールドワークは、初めての経験でとても刺激的でした。
 「変わること・変わらないこと」という観点からは、上野公園の歴史が江戸幕府から明治政府、そして現在のグローバル企業と、支配層の移り変わりと共に、いわば時代時代の最新ファッションを通じて娯楽空間としての民衆統合をはかっていく姿。また、西郷隆盛像のある広場が、高度経済成長期の地方からの上京者のたまり場となっていたものが、バブル経済終末期、イラン人のたまり場となっていたことが、資本主義社会のグローバル化における変化とともに、階層構造を象徴する空間となっていることもとても興味深いことでした。
 都市の魅力は雑多性です。ゲイ・コミュ二ティがこんな形であることも初めて知り、またコリアン・タウンの昔ながらの一画も、その由来を改めて聞くことでより親近感がでてきました。
 歴史を読み解くことで、都市構造を知る―それをわたくしたちの側からもしたたかに、そしてたくましく、まちづくりに生かしていきたいという思いを改めて感じた2時間でした。
                               
3.
 先日は参加させていただいて、ありがとうございました。
 五十嵐先生のご案内による街歩き、おもしろかったです。
 私の参加動機としてはエスニック・タウンへの関心が主でしたが、それにはとどまらない、多様な人々を受け入れてきた上野の歴史や、時代は変わっても文化の中心たろうとするまちづくり構想、新旧住民の同居など、エピソード満載で見ることができ、あっという間でした。
 地元商店主からではとても聞けない話でしょうね。
 企画と遂行してくださったみなさんに、感謝申し上げます。

4.
 先日は上野フィールドワーク大変楽しく参加させていただきました。
 上野というと博物館や上野動物園といったイメージが先行しますが、最近は渋谷、新宿に続きファッションなど買い物をする場が増えてきているなと個人的にも感じていた矢先の今回のフィールドワークでしたので色々な都市の動きなどが知れてとても面白く感じました。
 また、歴史ある上野の地域が時代が変わるにつれてどのように変容しているなど、自分が上野を利用する上では気づくことができない場(ゲイタウンやパブなど)を知り、見ることが出来てあらたな発見となりました。
 このような機会がまたありましたら是非ともまた参加させて頂きたく思います。


5/7 (金)
洪貴義(政治学、思想史)「在日の過去と未来の間」
5/15(土)
挽地康彦(社会学、移民研究)「大村収容所の社会史」


6/4(金)
金貴粉(国立ハンセン病資料館学芸員)「解放後における在日朝鮮人ハンセン病患者と出入国管理体制」
6/5(土)
講師:五十嵐泰正
上野フィールドワーク−上野の山と街を歩く
6/18(金)
鄭栄桓(在日朝鮮人運動史)「朝鮮『解放』と在日朝鮮人の法的地位」
7/17(土)姜信子(作家)
「われらの記憶、もしくは空白  〜語りえぬ記憶の接続法〜 」
7/24(土)崔真碩(朝鮮文学)
「李箱 生誕100年」
 
10/30(土)米谷匡史(思想史)
「大阪朝鮮詩人集団のサークル文化運動 ――詩誌『ヂンダレ』と「流民の記憶」」