在日本韓国YMCA>連続講座Cut'n'Mix
第6回 7/17(土) 姜信子(作家) 「われらの記憶、もしくは空白 〜語りえぬ記憶の接続法〜 」
七月十七日は、YMCAの一室に集まったみなさんと旅に出る。そう目論んでいます。 出発地は韓国のハンセン病の島・小鹿(ソロク)島、終着地は済州島。途中、さまざまな島々を巡り歩きます。私はそのツアコンです。 島々とは、たとえて言うなら、「ここにいても、ここにいない」人々の島々。もちろん、いわゆる「在日」も、良くも悪くも「ここにいても、ここにいない」存在。そういう認識を持つツアコンとして、中央アジア、ロシアのコリアン・ディアスポラの島々にもみなさんを案内する、そこに生きる人々の声に耳を傾ける、その記憶に触れる、そんな旅を考えています。二時間で島々の百年の記憶を駆け抜ける旅。ただし、成り行きで旅の道筋は、多少変わることもあるかもしれません。 この旅の裏テーマは、ちょっと堅苦しく、またかなり青くさい言葉ではありますが、「アイデンティティ」。それは、ツアコン本人にとっても実に切実な問いでありつづけたものであり、島々の記憶をいかに語り継いでいくかということにも、深い関係を持つものです。だから、裏の奥のテーマが、「記憶の接続法」。 旅には歌がつきもの、詩がつきもの、小説の話も飛び出してくるかもしれません。 ただ、なにしろ、二時間で百年ですから、なんとかみなさんと問いを共有できるところまでたどりつければ、そして、そこから、みなさんそれぞれの旅がはじまることになればと考えています。 1961年横浜生まれ。作家。恵泉女学園大学客員教授。著書に『ごく普通の在日韓国人』(朝日新聞社)、『棄郷ノート』(作品社)、『安住しない私たちの文化』(晶文社)、『追放の高麗人』(石風社)、『ノレ・ノスタルギーヤ』『イリオモテ』(岩波書店)等。