連続講座 移住者のリアリティ
レイシズム――それは今日、南アフリカのアパルトヘイトの終結に見られるように、人類が克服したもの、少なくとも克服せねばならない不正義なものとして認められるようになっている。しかし人種raceとは、われわれと他者を区分するという願望によって創り出され、その差異を自然で乗り越え不可能なものとしてヒエラルキー化する概念とすれば、レイシズムとはある時代や地域に限定されるものではなく、またその克服も、それほど容易なものではないだろう。
とはいえそれは、それぞれのレイシズムが、固有の歴史的文脈をもたないということではない。とりわけ今日、この社会において排外主義という形で生じているように見えるレイシズムは、その歴史的な文脈を無視して捉えることはできない。すなわち東アジアにおける冷戦構造の存続、自らの戦後責任を直視できない日本という文脈を。
と同時に、前世紀末からの新自由主義の台頭とナショナリズムの変容が、レイシズムに与える影響も見逃せない。こうした社会構造の停滞と変容は、いかに人びとをレイシズムに向かわせているのだろうか。