在日本韓国YMCA連続講座Cut'n'Mix

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Cut'n'Mix第3期「韓国併合」100年/「在日」100年を越えて
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  • 10/30(土)18:30-20:30、5月より延期となっていた米谷匡史(思想史)「大阪朝鮮詩人集団のサークル文化運動 ――詩誌『ヂンダレ』と「流民の記憶」」を開講します。
  • <2010/10/26>第3期の記録をアップしました。

○講座○「東アジア市民の連帯と在日、NPOの可能性」

講師:孫明修さん(NPOサポートセンター)


「認知されていない語りつくせない暴力を映像は記録できる」


「認知されていない語りつくせない暴力を映像は記録できる」
Cut&Mix 第2期 第4回目の講座「自力で表現する、発信するビデオ制作講座」が、6月3日韓国YMCAの2階会議室で開催された。参加者は7人と少人数であったが、充実したものとなった。
冒頭、講師の北川さんは自己紹介も兼ねて、学校を卒業した後北海道二風谷でアイヌと関わってきたことを語った。90年代初頭国際先住民族年によってこれまで光が当てられることがなかった二風谷が3日に1回テレビクルーが取材に入ることにより、コミュニティーに波紋が起こり、このことを通じて情報を伝える意味を考え、取材プロセスの重要さに気付き、それは自分を問い直すことになったという。
さらに自分が映像を通して暴力について考えていく場を作ろうとして、NPO「voices」を立ち上げとこと、映像祭を行うためのきっかけとなった一人の少女との出会いを語った。彼女が裕福な家に生まれながらも、親からの期待の大きさ、それが言葉や態度の暴力として表れることによって、情緒不安定に陥り、暴力事件などを起こしてしまったことについて述べ、「認知されていない暴力によって精神的に追い込まれていく。これを周りの人に伝えて助けを求めようとしても、ディティールは語りつくせない。自分はカメラマンでビデオは未知数だったが、映像は語りつくせないものも記録できるのではないか」と、映像で「認知されない」暴力を記録し、共通の場で見て、語り合うことの意味を述べた。
この後、昨年12月に開催された「VOICES映像祭」で上映された5本の作品を見た。
作品はいずれも3分程度のもので、家庭用デジタルビデオカメラで撮影されたもの。初めてビデオカメラを持つ人もいた。テーマは、車椅子や視覚障害者の道路や駅での移動の困難を訴えたもの、何気ない日常の挨拶言葉が時に人を傷つける、その関係性について、ネットの掲示板をきっかけとしたストーカー被害、靖国神社の8月15日の様子、など多岐にわたっている。北川さんは、映像祭が単に見て終わりなだけではなく、終わった後のディスカッションがさらにテーマを深めたことを指摘。いろいろなテーマの作品をいっぺんに上映することにより、それぞれのテーマでは当事者だが他の作品もあわせてみる事によって、自分を相対化できる場として重要であることを指摘した。
ビデオ制作の初歩について、実際にパソコンを利用して解説した。Windows XPは標準で「ムービーメーカー」というソフトがついており、これを利用することによって字幕や画像・音楽挿入や編集ができること、実際の撮影時のコツとして、編集時のことを考え対象だけをとるのでなく、合間にはさむ映像や画像をとっておくこと、1シーンは30秒が限度なことをあげた。
さらに取材するときの心得として、当事者に話を聞く際に現場に連れて行ってもらうことを挙げ、現場の力により当事者が忘れていたことを思い出して語りだしていくことがあったと、自分のハワイ取材での体験をビデオを実際に見ながら説明した。取材者が報道機関などのバックをもって取材にあたる時、当事者との上下関係が生じることがあり、それが場の力によって解消される効果があることも述べた。
質疑応答で、「取材者の立ち位置をどう考えているか?」との質問に対し、北川さんは
「中立の立場はありえないと考えるが、違う立場の人間ともつきあうことが大事だ。かつて『自分で住民台帳を作れ』と教えられたことがあるが、すべての人とつきあい意見を聞くことは重要だ。撮る作品は主観でかまわないが、客観性を保障する場は必要だと思う」と答えた。
3時間を超える講演・上映・体験と盛りだくさんになってしまい、参加された方が消化不良になってしまっていないか不安が残る。しかしビデオカメラを実際に持って撮影し編集し上映することによって、今まで意識できなかった暴力や問題が実感できること、さらに語り合うことによって、自分を問い直し相対化することができるという北川さんの言葉が少しでも伝わればよかったと思うが、どうだろうか。
参加された皆さん、講師をつとめられた北川さん、どうもありがとうございました。
川原 栄一


参加者の感想

●多面的な切り口で1つの問題を語られるので、よりリアルに現状をとらえることができました。ドイツとチェコの例をモデルにし、東アジアの可能性をさぐるというとてもスマートな切り口に、将来の東アジアに前向きな展望を見出せました。課題は多くとも…。
●在日・韓国・北朝鮮の実情や分析がとても役立ち、しかもその視点が「東アジア市民」にあることに改めて心打たれた。これからの学習と運動に役立てたい。今後ともよろしくおねがいします。