在日本韓国YMCA連続講座Cut'n'Mix

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  • <2010/10/26>第3期の記録をアップしました。

「堤防の中の教会・戸手」

  ○在日三世の対論:孫裕久さん(戸手教会牧師) 洪貴義さん(研究者)

「多摩川の河原に小さな街があります。トタン屋根の家々がところせましと建ち並んでいます。外から眺めていると何とかなく踏み込めない感じ。でも土手を乗り越えて一歩中にはいってみると驚くほどステキな街――」。でも今、「堤防のなかの街」は……。1977年、堤防の中にできた教会を訪ね、<生活の現場>から「在日」の歴史・現在・未来を話し合います。


堤防の中の教会・戸手

 5月27日(土)にフィールドワーク「堤防の中の教会・戸手」に参加しました。JR川崎駅から歩くこと20分。多摩川沿いの道に出ると、多摩川の方とこちら側がビニールシートで仕切られていました。スーパー堤防を築くために作られた仕切りです。近づいて隙間をのぞくと、何もない土地が晒されていました。そこにかつて住んでいた人々の名残は、何も残されていませんでした。

 川崎戸手教会では、牧師の孫裕久さんから戸手の現状をうかがうことができました。この地域は、戦後から在日朝鮮人の方々が生活してきた場ですが、国土交通省は度重なる水害を防ぐためにスーパー堤防をつくることを決定。そのために、計画区域内に居住されている方々は立ち退きを要求されたのです。水害から人々の生活を守るということは、ひとつの正義といえるでしょう。しかし、それが誰にとっての正義なのかを考えさせられました。この地で生活してきた人、一人ひとりにとって何が大切なのかは、この地で共に生きてきた人にしかわからないのではないかと。

戸手教会には、この地を立ち退かれた方が今も訪れています。今回のワーク後半のコミュニティ論は私にはやや難解なものでした。しかし、戦後この河川敷の街で形成された人と人とのつながりこそがコミュニティなのだと私は理解しました。ある場所で出会った人同士が同じ時間を共有し、今もそれぞれの場所にあって、過去から現在へとつながる同じ時間を共有し続けていることなのだと。

戸手河川敷の街は、その姿を消しつつあります。その歴史を残そう、伝えようとする時に、私はこの地域に生きたひとりひとりの方が、たくましく生きてこられた軌跡を、心からの敬意をもって伝えていく者の一人となりたいと思います。

そして、今もなおこの地域を愛し、ここで生活している方々がいらっしゃいます。今回お会いすることはできませんでしたが、一度この地を訪れただけで、なんとなく会ったようなつもり・わかったつもりになってしまうことのないよう、またこの街に来て、出会い、過去からつながる時間を共有することのできる者となりたいと、強く願っています。

真鍋 泉(在日本韓国YMCA会員)


参加者の感想

●孫さんのお話を聞いていく中で、戸手という場所に住んでいる人々がどういう風に生きていて、どういうことを感じ、生きているのかを知ることが本当に大切なんだなと思いました。そういうことをすべて抜きにして行政や日本の歴史の問題ばかりを意識しようとしていましたが、戸手のことを分かった気になっていてはその問題すらも捉えることができないのだと気付きました。
●孫裕久牧師のお話を楽しく伺いました。戸手の状況を殆ど知らないまま参加したのですが、牧師の人柄から、話された具体的な事が印象深くありました。
●実際に戸手の場に来て、また現状についてのお話、孫牧師さん自身の体験によるお話etc大変貴重な機会でした。コミュニティ自体がなくなるかもしれないというこの時に出会えたこと幸いでした。