在日本韓国YMCA連続講座Cut'n'Mix

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  • 10/30(土)18:30-20:30、5月より延期となっていた米谷匡史(思想史)「大阪朝鮮詩人集団のサークル文化運動 ――詩誌『ヂンダレ』と「流民の記憶」」を開講します。
  • <2010/10/26>第3期の記録をアップしました。

5月19日(金)

「越境文化の対話力

  ――ブランド・ナショナリズムを超えて」
講師:岩淵功一さん(メディア・文化研究)

韓国と日本の関係は今世紀にはいってから大幅に改善・進展しています。とくに文化の相互交流が、メディア産業、制作者・表現者、オーディエンスなど様々なレベルで活発になっています。しかし、文化越境がもたらすつながりは、いまだに国という枠組みに強く規定されています。その傾向は、国をブランド化する力学が世界規模で高まるなか、ますます顕著になってさえいます。本セミナーでは、日・韓をはじめとする東アジアのトランスナショナルな文化交通が、ローカルにおけるマルチカルチュラル、ポストコロニアルな問題といかに交錯し(損ね)ているのかを批判的に検証するとともに、どうしたら新たに生成している対話の萌芽を国という枠組みから解き放して育むことができるのか一緒に考えてみたいと思います。


ナショナリズムを超えて―切れてつながる試み、再び

 「切れてつながる」とは、ある在日朝鮮人詩人の70年代の言葉だが、それは在日の孤立した言葉ではなく、世界の諸領域の様々な文化実践と呼応しあうものだった。すなわち例えばカリブ海諸島からロンドンへ、あるいはジャマイカからニューヨークへという移動の経路を表現しようとするCut’n’ Mix (切れてつながる)という実践と共鳴しあう世界普遍的な思想だったのである。
 自らのアイデンティティや文化を祖国としての根源的なrootsに固定するのではなく、移民や離散、移動のプロセス、経路というroutsとして表現しようとすること。そのような実践こそがわたしたちの試み、この連続講座の「切れてつながる試み」だ。

 第1回講座は去る5月19日、岩渕功一氏(早稲田大学/メディア・文化研究)による「越境文化の対話力:ブランド・ナショナリズムを超えて」という講演が東京で行われた。簡単に報告しておこう。
 かつての「国民国家論」はすでにその役割を終えている。グローバリゼーションのもとで国家が衰退し相対化されていくという予測は、安易な希望的観測だったことが今や明らかになっているからだ。それに対して現在台頭しているのは「ブランド・ナショナリズム」という新たな国家主義である。わたしたちはまずこのナショナリズムのブランド化を直視しなければならない。その上でそれを単に否定するのではなく、具体的に超えて行く想像力や実践を前景化させていくべきだろう。
 こう岩渕氏は話し、都市やコスモポリタニズムの可能性に言及しつつ、国家より大きいと同時に小さくもある公共性を目指す文化市民権を実践していくことを呼びかけて講演を終えた。

 話のあとは、質疑応答と交流会を持ったが、参加者の発言がまた興味深いものだった。わたし個人は公共性と同時に親密性にポイントを置くが、それは具体的他者との出会いやつきあい、国という単位ではなく、地域での様々な試み、子どものときからの記憶などがナショナリズムを具体的に超えていく批判的テコになると考えるからだ。交流会での発言者のそれぞれが、その人なりに具体的な課題を抱えながら「日々の仕事」(ウェーバー)に就いている、1人1人の話はそのことをはっきりと示していた。これがわたしたちの新たな希望の種子になることを予感させる、この日はとても喜びに満ちた一夜だった。

 「切れてつながる試み」はこれから1年間続いていく。読者には企画への注目とご参加を呼びかけたい。新しいCut and Mixはあなたが作り上げていくものなのだから。

(洪貴義)

インターネット新聞「JanJan」掲載記事より抜粋 http://www.janjan.jp/living/0605/0605234835/1.php


参加者の感想

●先生の考え方の枠組はよく分かりました。たいへん興味深かったです。これからメディアにおけるさまざまな現象を視るとき、参考にさせていただきます。
●内容がもう少し具体的であればよかった。人数が少なかったので一人一人自己紹介する場が欲しかった。
●もっと日本・韓国双方の歴史やフィールドワークの事前調査の事等について興味があったので具体的な話が聞きたかったです。色々な人の話を聞いて、日本の少数民族の人たちはタブー視されて来て、一般の人達が見るステレオタイプ的なイメージとのギャップを感じているのではないかと思いました。今度意識して行きたいと思います。在日が身近であること、法律の改革が色々な面で重要である事に気付かされました。

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